2023(R5)年度の対馬市海岸漂着物に関する調査報告をいたします。
以下の内容は「令和5年度対馬市海岸漂着物モニタリング業務委託報告書」より一部抜粋のものとなります。 報告書の全容はこちらからご確認ください。 海ごみ関連資料
なお、表中の数値は四捨五入して計算しているため、表示した数値の計算結果と合計が一致しない場合がある旨をご了承ください。
年間漂着量を推計した結果、2023年1月下旬から2024年1月中旬までの推定年間漂着量は、およそ 37,000 ㎥(36,764 ㎥)となった。
年間再漂流量および年間蓄積量の計算
年間再漂流量を推計した結果、2023年1月下旬から2024年1月中旬までの年間再漂流量はおよそ85,000 ㎥となり、前述の年間漂着量およそ37,000㎥を130%程度上回る数量が算出された。
漂着ごみの年間再漂流量が増えた理由は、以下のような要因が考えられる。
1)海流や風および出水の影響で、漂着ごみが押し流された2)漂着ごみの蓄積量が海岸の蓄積許容量を超えたため、流出が起こりやすくなった
特に、五根緒海岸のごみが大きく減少した理由として、大雨等の影響により海岸の地形が大きく変わっており、これに伴ってごみが拡散、または海岸内で埋没したことが考えられる。
また、近年は他の海岸においても目視枠内のごみが大きく減少しているケースが見受けられる。
種類別回収量の過年度比較
種類別回収量の過年度比較(単位:容量L)
過年度調査の種類別回収量と比較すると、2019 年度、2022 年度の「流木、灌木(自然系)」の増加が顕著であったが、2023 年度の漂着量は減少しているものの「流木、灌木(自然系)」が目立つ。
主な要因として一年を通して発生した豪雨や台風の影響、地形の変化、海流などの変化により変動するものであると考えられる。
調査時期別回収量の過年度比較
調査時期別回収量の過年度比較(単位:容量L)
調査時期別の回収量について、全体的に昨年度より減少しているが、夏季の回収量が多かった主な理由は、2023 年度 8 月の大型台風や局地的な集中豪雨が発生し山林から河川を通じて海岸に漂着する自然木のほか、海岸の形状、波浪、風の影響による「流木、灌木(自然系)、人工木」の流失が多かったからであると考えられる。
調査地点別回収量の過年度比較(単位:容量L)
調査地点 6 地点のうち、田ノ浜、上槻を除く4地点で昨年度の回収量を下回る調査結果となった。
過年度比較から判明する回収量が減となった理由は、2023 年 8 月に大型台風の影響はあったものの流木・灌木以外の分類区分ごとの漂着量の増は確認できなかったことが主な要因であると考えられる。
気象状況による地点別の回収量の増減は、今後も続くと思われ引き続き調査データの積み重ね、地形の変化などを観察する必要がある。
効果的な発生抑制対策
1、漂着物に占める人工物・自然物・漁具の割合から考えられる対策
①自然物
流木・灌木等は出水の影響が大きく台風や洪水、局地的な集中豪雨等の災害により、山から河川を通じて海に流出していると考えられる。そして、今後は地球温暖化の影響により自然災害の増加に比例して流木・灌木等の漂着ごみの増加が予想される。
また、放置され管理の行き届かない山林が増加した場合はさらなる流木・灌木等の漂着ごみの増加が予測されるため、陸と海の一体となった政策が必要だと考える。
②人工物
発生源が特定できるペットボトルは韓国と中国から大量に漂着している。この調査結果を韓国や中国の研究機関および環境団体と共有することが必要であると考えられる。さらに今年度の調査では国籍不明のものを多く確認した。
国内のペットボトル、金属製缶類のほか家庭ごみと判別されるごみも多く、依然として不適切な処理がなされていると考えられる。
国内においては、日本各地で行われているペットボトルの調査結果を国内の環境団体や研究機関と共有し、協力して海洋漂着ごみ対策を進めていくことが大切である。
③漁具
漁具で最も多いのは発泡スチロール類で、優先的に発泡スチロール類の回収を進めていく必要がある。
また、あなご漁に使用する筒のふたが大量に漂着している。そのため、漁具が漂着ごみにならないよう抜本的な対策を考えることが大切である。
2、漂着ごみの発生国
調査結果より、ペットボトルをはじめとする人工物の多くが海外から漂着していることが推定される。発泡スチロール類やペットボトル等、比重の低いものは流されやすくまた、再漂流していく。
そのため、地理的に日本海の入り口に位置し、海流や季節風の影響で東アジアから大量に漂着ごみが流れ着く対馬で早期に回収することが、日本全体の漂着ごみを減らすためには効果的であると考えられる。
また、海外由来の漂着ごみについては、この対馬の現状を日本全国、そして世界に発信していくことが解決に向けての第一歩であると考える。まずは情報を共有し韓国や中国との協働を進めていきたい。